我々の様に長年洋服に携わっていると、見えなくても良いものが見えてしまったり(幽霊ではありませんよ)、気にしなくて良いところを気にしてしまったり(心を病んでいる訳ではありませんよ)することが在ります。

不特定多数の人々と接する機会が多い事、或いは装いに妥協をしたくない時など、仕事上での物が大半を占めますが、時々沢山の人と会話を交えて思うのが感じたままを言葉にする事の大切さです。

誤解を招きかねない発言ですが、具体的にどんな事かと言うと、

良いと思う物を良いと伝え、素敵と思う物を素敵と伝える

と言う事。

その昔何方かが『美しい花を見て、美しいと思える心が美しい』と仰っていました。

私が伝えたい事とは少し違いますが、「素晴らしい」、「素敵」、「上手」、人を褒めるのに相応しい言葉は、伝えて初めて称賛に変わります。

とかく人は長く生きると、歳と追うと共に、利己的に拍車が掛かり、時にワガママになってみたり、時に天邪鬼になってみたりと、心の底をそのまま口にする事を恥ずかしさを覚えてしまう事が在ります。

然しそれは、時に意図せぬ罪を生む場合が在ります。

例えば、御洒落を愉しんでいる方、そしてそれを身に着け人前に出た時、友人知人家族の前に現れた時、あなたはその方の姿を素敵と思った時に、それを相手に伝えていますか?

無論、素敵と思えなければ口にする必要は在りません。

もし素敵と思った時、冗談ありきで、相手に"揶揄"した表現を伝えてしまったとしたら、相手はどんな受け取り方をするだろうか?

勿論冗談の解る気の繋がりのある関係ならば何も心配は要りませんね?

ここで少し話を逸れますが、多くの場合、御洒落を愉しむ事は『自己表現』であり、『自己主張』であると私は考えています。

御洒落をして沢山の称賛を得ると、人は『自信』が持てる様になります。

これが『自己啓発』になります。

何を隠そう、私自身も20代前半までは自分に自信の持てない人間でした。
時代が湧きかえるバブル景気に青春を過ごし、友人知人と共に当時のファッション雑誌にスナップとして掲載してもらう事が嬉しく、そして楽しく、やがてそれらを自信へと変え、過去ログにも記載の通り、ファッション業界へ飛び込みました。

然し仕事は人との会話が大半。
人前で話す事が不得意な私にとって、それらを「仕事」として強いる事によって、徐々に自己啓発を強めて行きました。

ダメ出しも在ります。
失敗も在ります。

然しそれらが蓄積された事によって人に間違えの無い助言をする事を心がける様になるのです。

話は戻りますが、つまり御洒落を愉しむ人の多くが自己啓発を知らず知らずのうちに携えています。

その自慢の御洒落が揶揄された言葉によって褒められたとしたら、相手は少なからず『疑心暗鬼』になります。

「今日はパーティーでもあるの?」
「そんなに若い恰好して・・・」
「肌出し過ぎじゃない?」
「お化粧濃すぎじゃない?」
等々

悪気無く発せられる言葉のやり取りは、素直さに欠ける表現の場合、相手に不安を与えるのです。

きっと発する側に多いのは、社会的立場、年齢的立場が上の方、或いは自信のある方が多いことでしょう。
然し、下克上を目指すのではない御洒落にとって、この心無い言葉はマイナスに働くのです。

だからこそ沢山の経験を積んで来た人々へ伝えたい、「素直に素敵を『素敵』と伝える」こと。

称賛を受けた相手は、その言葉に喜びを覚え、そして自信に変え、自己啓発を促す。
たった一言の素直な言葉が、人を幸せにし、人に力を与えてくれるのです。

色眼鏡せずに物を見る事は、人に素直さを与えます。


私達はこれまでの数十年間、仕事の折様々な場所、それも一流と言われる物を見て、触れて、感じる様に努めています。
仕事の一つとして私達自身も啓発し、またそれらを御客様への造詣としてお伝えし還元する為です。
見て知る事は「知識」と言う財産として残り、その知識をより多くの人々と共有する事も仕事です。

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一流を感じる事が無ければ、自分の居場所、自分の仕事の立ち位置を測る事が出来ません。

上には上が在り、上を知れば知るほど、より高く、そして確かな造詣を養う事が出来ます。

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一流と呼ばれる場所や店舗が、どんなサービスをするのか、どんな知識を持っているのか、自分との違いを理解させてくれる様々な要素になります。

人生の中に最小値が0、最大値に10が在るとしたら、5までしか知らなければ、10を語るのは「想像」でしかありません。

10を知る事で5を確実に伝える事が出来る。
或いは多くを測り知る事が出来ます。

私達は御客様との会話の中に、多くをお話します。
場合によっては8までしか知らない物もあるでしょうし、5までしか知らない物もあるかも知れません。

然し限られつつも、その経験値の中でお伝えする話には、確実に役立ちたいと言う思いが付されます。

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飽食の時代に生きた私達と同年代の人、或いはその後を生きてきた人、全ての人にとって多くを見て、知って、触れて、感じる事は、御洒落だけに限らず大切な感覚であり、知識です。

本物を見て本質を知る事です。

話は前後しますが、色眼鏡無くして見た物を素直に伝える事は、家族であれ、友人知人であれ、意図せず相手を『思いやる気持ち』に変わります。

本物を見て本質を知る事も、素敵な物を見て素敵と感じる事も、同じ『素直』から生まれる物。

揶揄は皮肉と言う衣を着せた羨望。
御洒落を愉しむ事に揶揄は必要ありません。

それぞれの御洒落を確立する為に働く美意識と探求心。
皮肉を真に受ける事は我々世代にとっては余り多いとは思えませんが、素敵になりたいと言う意識を持てる人は数多でも実践できる人は数少ないと思います。

御洒落を通じて、自己発信、自己啓発、そして新しい自分発見になると良いですね。

承認欲求ばかりが高くなるのはいただけませんけどね?


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