新たに開設したブログ「IL MARE LIFE | A Loner's Monologue」では時折、ゲストを招いて寄稿を頂きます。

今回ゲストとして初めてご紹介させて頂くのは、予てより私共が善福の信頼を置いている「Sartoria Bruciare」の雁瀬氏。

古くは昭和の時代から仕立てを生業としていた前社長率いる企業を前身に、2013年より本格的な活動を始めた「Bruciare」。
その担当者であり部長である雁瀬氏とは、突然の出会いで始り、その後のお付き合いは現在に至るまで長く、そして懇意にして頂いてまいりました。

日本がナポリを中心とした本格的なサルトリアの技を紹介し、魅了され、それらが一般的となった今に至るまでには、相応の歴史が在りました。

それらは(過去の記事にも記載の通りですが)、日本に於ける一つの「オーセンティック」への捉え方が変わった切っ掛けでもあり、また同時に、日本の職人たちが持つ高い技術を活かし、更には日本に数少ない手練れの技を身近に感じられるようになり、多くの人々の目、手に触れる事となった「手作りの業」。

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雁瀬氏が帰属する会社もまた、様々な工場や職人との繋がりを持ち、それらを如何なく発揮するべく「Bruciare」が作られました。

かつての時代に比べ、現在ではイタリア帰りの職人(サルトリア)が日本国内で自身の工房や店を構え、各誌面、媒体には数多くの名前を見る事が増えました。

雁瀬氏の仕事は、良い意味で実に愉快です。
個性的で朗らかな性格も相まって、我々との取り組みに於いても、笑いを加味しながら様々な知識と造詣を与えてくれます。

彼はBruciareを広める際、こんな事を言っています。
(以下、雁瀬氏)


『今までの日本のスーツは、シワの有無、ステッチの有無、ポケットの形状など、全体の形状だけで、スーツの善し悪しが語られていました。

では、スーツにとって最も重要な核心部分とは何か?

それはドレープラインと言えるでしょう。

ドレープとは

『布を纏わせる』

と言う意味です。

本来のスーツは人体に沿って生地を曲げ、その美しい曲線、つまりドレープラインによって立体的なスーツのフォルムを形成するのです。

このドレープラインによって着る者をより美しく魅力的にし、着用時に体感出来、包み込まれる様な着心地、軽さ、動きの良さを実現していくのです。
このドレープラインを追求した物が我々の仕事です。』

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『我々のジャケットはタイトなシルエットで在りながら、量産品の倍以上の時間のアイロンワークを駆使して、立体的に仕上げ、身体の一部であるかの様にストレスを感じさせない着用感を生み出します。

美しくエレガントな胸のラインから、細目にシェイプされたウエストライン、大きく開いたフロントカットによって、全体的なバランスを保ち、極めて小さなアームホールに、袖付けは肩回りの動きを良くする為、雨振袖などを加えたマニカ・カミーチャの仕上げ。

またパンツもジャケット同様にアイロンワークを駆使し、浅い股上から裾口までタイトなシルエットで在りながら、ストレスを感じさせないフィット感、機会縫製を超える着用感を実現させました。』

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雁瀬氏を見ていると、お付き合いが長い事も在りますが、常に穏やかでにこやか、関西出身の彼らしい笑いのセンス、どれを取り上げても、スーツを極める人間とは(良い意味で)かけ離れています。

そんな彼と私達との取り組みは、突然やって来ました。

それは私の予てからの願いである

『女性のパーソナルオーダーをして欲しい』

と言う一言から。

長年、全国の老舗店のオーダーを受ける一方、公や大手企業のスーツを手掛けて来た彼等。
紳士服、紳士注文服を専門にやって来た彼にとって新たな取り組みへの一歩になりました。

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起っての願いでもある女性用のパーソナルオーダー。

当時、本格的にイタリア製の様な雰囲気や作りを持つジャケットは数少なく、女性の注文服と言えば、高齢の白髪交じりのお婆様がお召になられる様な「ブカブカで派手なモノ」と言った印象は否めませんでした。

それからと言う物、共に試行錯誤を重ねて数年。
やがて一つの完成形が出来上がりました。

それらには紳士服同様の作りや、イタリアの名ブランドに引けを取らない緻密なディテールとシルエットが奢られ、他に類を見ない「女性用のジャケット」が出来上がったのです。

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そこには、長年クラシックの世界に身を置く、彼の知識や造詣、様々なアイディアが投影され、多くの魅力を一つのジャケット、仕立ての中に見る事が出来ます。

一言で「仕立て」と言っても、その形は、英国調からフランス、イタリア、アメリカと様々な国に代表される雰囲気や様式が在ります。

ジャケット一つに求められる、お客様が望む

「雰囲気」

はとても大切で、それらに見合ったお店選びが、オーダーには重要となります。

私達の作るジャケットやスーツには、ある一定の要素が元になっています。
それらを基に、お客様との感性の共有や作りへの理解、何を求めているかなど、緻密な話から始まります。

特に、こうした話とは縁が少ない女性物(女性のパーソナルオーダー)にとっては、蘊蓄は二の次。

つまり、

袖を通した時に感じる

ことも大切にしています。

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こうして、烏滸がましくも二人三脚を経て作り上げられた、様々な仕立てには、雁瀬氏が予てから時代の潮流に飲まれる事の無い

クラシック

を貫く信念が息づいていると感じさせてくれます。

当店に於けるオーダーとは、何処彼処でも作る事が出来るようになった今、低コストで満足を得る、安易なオーダーと言う言葉の独り歩きとは違います。

きっと、それらは袖を通して初めて感じるものになると我々は信じています。


(※パーソナルオーダーにご興味のある方は、是非店頭にいらした際、スタッフにお尋ねください。)


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